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大阪高等裁判所 平成7年(行コ)7号 判決

控訴人

森池豊武

外二一名

控訴人ら補助参加人

櫛田裕子

外三名

右控訴人ら及び補助参加人ら訴訟代理人弁護士

金子武嗣

山田康子

秋田真志

青木佳史

峰本耕治

被控訴人

貝原俊民

外三名

右被控訴人ら訴訟代理人弁護士

岸本昌己

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用のうち、参加によって生じた部分は補助参加人らの負担とし、その余は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人らは、兵庫県に対し、連帯して金二一四二万四〇〇〇円及びこれに対する平成三年三月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

二  被控訴人ら

主文と同旨

第二  事案の概要

原判決の「第二 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決六枚目表一〇行目の「中田工務店」を「株式会社中田工務店」と改める。

第三  争点に対する判断

原判決の「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、次のとおり付加訂正する。

一  原判決一五枚目表二行目の「相当である」の次に「(なお、控訴人らは、教育長は、歳出予算額の範囲内において、「かい」に予算を予算令達書で決定しなければならないとされていること(財務規則一六条一、二項)からして、予算令達は適正な予算執行を確保するための手続であって、財務会計上の行為である旨主張するが、右説示のとおり、予算令達は行政内部の事務処理的行為であって、普通地方公共団体の公金その他の財産の財産的価値の維持、保全又は実現を目的とするものではなく、これによって直接に当該地方公共団体に財産的損害を与え、または与えるおそれのあるものではないから(後記6説示のとおり、住民訴訟の対象とすることができるのは右行為に限定されるというべきである。)、住民訴訟の対象となる財務会計上の行為に該当しないというべきであり、控訴人らの右主張は採用できない。)」を、同五行目の「置かれ」の次に「(地教行法一六条一項)」を、同六行目の「機関であり」の次に「(地教行法一七条一項)」をそれぞれ加え、同枚目裏七行目の次に行を改め「6 なお、控訴人らは、本件用途廃止等の教育財産の管理行為は、住民訴訟の対象たる財務会計上の行為であり、かかる教育財産の管理権限は本来教育委員会にあり、それが教育長に委任され、さらに教育長の用途廃止の決議権限が財務課長の専決事項になっているものであるから、教育委員会及び教育長のいずれについても、被告適格が肯定されるべきである旨主張する。しかしながら、住民訴訟は前記一2のとおりの目的を有するものであって、その対象となるのは、当該地方公共団体の執行機関または職員による財務会計上の行為、すなわち普通地方公共団体の公金その他の財産の財産的価値の維持、保全又は実現を目的とする行為であって、その行為の結果如何によって直接に当該地方公共団体に財産的損害を与え、または与えるおそれのあるものに限られ、右以外の行為は、仮にこれによって当該財産の財産的価値に何らかの影響を及ぼすものであったとしても、住民訴訟の対象とすることはできないというべきところ、本件用途廃止等は、県教育委員会により、その職務権限である教育行政上の観点から行われる教育財産の管理行為であり(地行法二三条二号)、教育財産の財産的価値に注目して、その維持、保全または実現を直接の目的とする執行機関または職員の行為ということはできないから、右行為は、住民訴訟の対象となる財務会計上の行為に該当しないというべきである(なお、控訴人らは用途廃止を含む行政財産の管理行為が財産管理の側面を有し、財産管理の観点から違法事由が存すれば、財務会計上の問題として住民訴訟の対象になる旨主張するが、右説示にかかる住民訴訟の目的や対象等に鑑み、右主張は採用することができない。)。したがって、右行為がこれに該当することを前提に、教育委員会及び教育長に被告適格があるとする控訴人らの主張は失当である。」を加え、同八行目の順番号「6」を「7」と改める。

二  同二〇枚目表同八行目の次に行を改め、次のとおり加える。

「 控訴人らは、教育財産の処分及び取得を伴う本件校門改修についての実質的決定権限は、教育委員会にある旨主張する。しかしながら、地教行法上、教育財産の取得及び処分に関する事務は地方公共団体の長の職務権限であり(同法二四条三号)、地方公共団体の長は、教育委員会の申出をまって、教育財産の取得を行うものとするとされているところ(同法二八条二項)、学校建築に関する両者の関係については、学校建築の内容をなす請負契約の締結、財産の取得、支出の命令は地方公共団体の長の権限であるが、その前段階で行われる建築の計画(敷地の選定、配置図、略設計書の作成等)は教育委員会で行うものであることを前提としたものと解するのが相当であること、県では、教育財産の取得の事務のうち「かい」の所属に関するものについては、その事務は知事からかい長に委任されていること(公有財産規則一〇条二項一号、一六条)、したがって、公有財産管理者としてのかい長(同規則二条七号、一〇条二項一号)が学校建築の内容をなす請負契約の締結、財産の取得、支出の命令の権限を有し、その前段階で行われる建築の計画(敷地の選定、配置図、略設計書の作成等)を県教育委員会で行うことになること、以上を総合すれば、教育財産の取得を伴う本件校門改修工事の実質的決定権限は、かい長である被控訴人衣川にあったものと解することができるから、この点に関する控訴人らの右主張を採用することはできない。

さらに、控訴人らは、本来的に地方公共団体の長が教育財産の取得を行うについて、教育委員会の申出を要することから(地教行法二八条二項)、その実質的決定権が教育委員会にあり、また、教育財産の処分についても同様に解すべきであるから、本件校門改修工事についての実質的な決定権は、県教育委員会にあり、右教育委員会の申出を適法要件とするものであるところ、本件において、その手続を踏んでいないから、本件校門改修工事の実質的決定手続には、明らかな瑕疵が存在する旨主張する。しかしながら、地教行法二八条二項の規定からして、教育財産の取得及び処分については教育委員会に実質的決定権があると解することはできないこと(地方公共団体の財産を取得、管理及び処分をすることは、地方公共団体の長の職務権限であり(法一四九条六号)、教育財産の取得及び管理も右長の権限とされていること(地教行法二四条三号)、教育委員会は教育財産の管理や校舎その他の施設及び教具その他の設備の整備に関する事務を行うものの(地教行法二三条二号、七号)、そのために新しく教育財産を取得する必要が生じたときは、教育委員会から地方公共団体の長に申出て、その申出をまって、右長がこれを取得する(地教行法二八条二項)等とされていることに照らせば、地方公共団体の長は、教育財産を取得するについて、教育委員会の申出をまち、かつこれを尊重すべきことを要請されるものの、取得するについての判断そのものは地方公共団体の長が行うものと解するのが相当である。)、県においては、地教行法二八条二項の教育委員会の申出について、教育長は県立学校の長等に専決させることができるとされていて(兵庫県教育委員会事務決裁規則(昭和五三年兵庫県教育委員会規則第二号)六条)、本件校門改修にかかる教育委員会の申出については、高塚高校長が専決できることになっており、当該申出にかかる裁量権は右高校長が有していること、本件において、高塚高校長であった被控訴人衣川において取得決定をしたことからして、右地教行法二八条二項規定の申出があったといえること(なお、控訴人らは、地教行法二八条二項の教育委員会の申出に関しては、校長に対する委任を認めると、校長は自分自身に申出を行い、この申出を受けて、自らが教育財産を取得することになって、右地教行法二八条二項の趣旨が完全に没却されてしまうから、右委任は認められず、前記規則が教育委員会の申出を対象としているものであれば、右規則は、地教行法二八条に違反する、違法無効なものである旨主張するが、教育財産の取得につき、その申出をする権限者(教育委員会)と、決定をする権限者(地方公共団体の長)とが異なるところ、各権限者から適法な手続を経て同一人に委任された結果、同一人である校長において、右申出及び決定をなすことになったのであるし、その委任事務の内容をも併せ考慮すれば、そのことでもって直ちに、右各行為が、地教行法二八条に違反する、違法無効なものであって、本件契約及び公金支出を違法ならしめるものということはできない。)、以上に照らせば、控訴人らの右主張は採用できない。」

三  同二〇枚目裏五行目の「事実関係からすれば」を「事実、ことに、被控訴人衣川は右(二)(10)のとおりの教育的配慮から本件校門改修の決意を固めたこと、高塚高校長に転補すべき旨の内示を受けてから、本件当初契約を締結するに至るまでの間、被控訴人衣川が、公務運営委員会、職員会議、生徒会執行部、学校側関係者、保護者側関係者及び生徒側関係者で構成される三者会議との話合いやその内容、被控訴人衣川の本件校門改修についての意向やこれに対する反応等、あるいは学事課長等県教育委員会側との間でなしてきた協議等の事実に徴すると」と改め、同八行目の「法的に」を削除し、同九行目の次に行を改め「控訴人らは、本件校門の改修がかい長である被控訴人衣川の合理的な裁量に委ねられていたとしても、同被控訴人の判断が全く事実の基礎を欠き、または社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合には、裁量権の行使が違法となると解すべきである旨主張するが、右主張にかかる判断基準は、前記説示にかかる判断基準とはその実質において異なるものとはいえず、控訴人ら主張にかかる判断基準に依拠したとしても、被控訴人衣川の前記判断が違法であると解することができないとの右説示を左右するものということはできない。

なお、控訴人らは、本件校門の性質や耐久性からは明らかに改修は不要である以上、本件処分が校長の裁量権の範囲内と認められるためには、教職員、生徒、遺族の合意のみならず、県民の理解も必要であり、かつ前提として、本件事故の原因の本質を理解した上での真摯な教育的配慮が高塚高校で実践されなければならないところ、それらは全く欠けているのであるから、本件処分は裁量権の範囲を逸脱したものである旨主張し、本件校門改修に至る経緯が妥当でなかった根拠として、①事件後である七月二〇日の全体保護者会に現れた各保護者の意向及び夏休み中に生徒会が行った全生徒に対する本件事故について学校に望むことに関するアンケート調査の結果が極めて重要であるところ、右保護者会等では、本件校門改修の話は出ていないこと、被控訴人衣川には赴任前から校門改修の意向があったこと、被控訴人衣川の赴任直後の校門改修案は、同被控訴人(及び教育委員会)の独断であり、関係者、少なくとも、保護者や生徒全体の意向とはかけ離れていたこと、被控訴人衣川は、保護者会や生徒の意見を聞く等せず、その意向を無視して、本件校門改修を決定したこと、②被控訴人衣川は、生徒会、一年七組の生徒代表、教職員、三者会議における保護者へ校門改修への同意を求める説明に置いて、実際にはそのような意向は示されてもおらず、遺族の意向はむしろ消極的とも評価できるものであったにもかかわらず、必ず一貫して、改修は遺族の強い希望であるとして、遺族感情に乗じて反対の意向を封じ込めようとしたという詐欺的な手法を取っていたこと、③被控訴人衣川は、本件校門改修について、教職員の理解や支持を得たものではなく、得ようと努力したものではなかったこと、④生徒会や生徒の多くは校門改修には否定的であったこと、⑤以上の経緯からすれば、被控訴人衣川が、赴任前より教育委員会と協議してきたとおりの早期の校門改修を、関係者を詐欺的に説得してまで強引に断行したのであり、このような経緯をたどって決定された本件改修の決定は、校長の適法な裁量権の行使の結果とは認められるものではないことを旨主張するところ、被控訴人衣川が本件校門の改修を決定するまでの経緯等は前記認定のとおりであって、高塚高校長に転補すべき旨の内示を受けた段階頃には、本件校門を改修しようとの気持ちが強く、着任後にはある程度改修したいと考え、その後県教育委員会の職員とも協議し、職員等学校側関係者、保護者側関係者、生徒側関係者らと話し合い、説明をしたりして、右決定に至ったのであり、その過程において、前記(二)(10)のとおり聞いたことがあった本件校門についての遺族の発言を話したことがあったものの(被控訴人衣川本人)、本件校門改修が遺族の強い希望であるとして遺族感情に乗じて反対の意向を封じ込めようとしたという詐欺的手法を取ったとは認め難いこと(被控訴人衣川本人の供述に照らせば、この点に関する甲四九のみでは右控訴人ら主張事実を認めることはできない。)に照らせば、高塚高校長としての被控訴人衣川の本件校門改修決定が、その裁量権の適法な行使とはいえないほど、何人の目から見ても明らかな過誤や不合理なものであったということはできない。

また、控訴人らは、被控訴人らの主張する教育的配慮は、本件事件の原因や本質を省みないで、その事実をなるべく早く人々の記憶から消し去ろうとする意図がかいま見える皮相なものであって、被控訴人らが真摯に教育的配慮を口にするのならば、本件事件を二度と繰り返さないために、高塚高校や県の教育は何をすべきであるかを明らかにし、その課題との関係で、本件校門改修がなぜ必要であるかどうかを論じるべきであること、本件事件後、高塚高校に求められていた教育的配慮とは、生徒指導の名の下、一人の命を失うことになった管理的な教育姿勢を抜本的に改めること、そのために保護者や生徒との対等な信頼関係を構築し、生徒一人一人の人権が尊重され、個性を発揮できる学校生活を実践することであった旨主張するところ、前記認定にかかる被控訴人衣川が考慮した教育的配慮が本件事件をなるべく早く人々の記憶から消し去ろうとする皮相なものであったことを認めるに足りる証拠はなく、本件事件が生じた原因やこれを繰り返さないために何をなすべきであったか等につき、控訴人ら主張にかかる立場や考え方が存在することを肯認したとしても、前記(二)(10)認定にかかる教育的配慮をなすことが許されないものということはできないし、本件校門改修について、教育の専門家として、合理的な裁量判断を委ねられていた高塚高校長である被控訴人衣川が、同認定にかかる教育的配慮のもとに本件校門の改修を決定したことが、その裁量権の適法な行使とはいえないほど、何人の目から見ても明らかな過誤や不合理なものであったということはできない。」を加える。

四  同二一枚目裏八行目から九行目にかけての「三月三一日」を「四月一日」と改め、同二二枚目裏七行目の次に行を改め「さらに、控訴人らは、本件決裁規程六条の財務課長の専決は、問題のない軽微な事案についての例外的なものに過ぎず、本件決裁規程四条、本件規程二七条、三四条を基に、上司である教育長の決裁を受けなければならなかった旨主張する。しかしながら、本件決裁規程は、県教育委員会及び教育長の権限に属する事務で県教育委員会事務局において処理するものについての決裁の区分及び手続を定めることにより、事務処理の責任の所在を明確にし、合理的で能率的な事務の処理を図ることを目的とするものであること(一条)、右規程によれば、教育長決裁事項(五条)及び係長決裁事項(七条)以外の事項は、原則としてすべて課長又は室長の専決事項とされていること(六条)、専決者(教育長を除く。)は、四条の定める重要事項等については、例外的に上司の決裁を受けなければならないとされていること(四条)に照らせば、本件決裁規程は、課長又は室長の決裁を原則として、例外的に重要なものを上司である教育長の決裁を受けなければならないとしたものというべきであるから(ちなみに、本件は、校門の整備に関する工作物の用途廃止であり、日常的な事務処理として、通常の決裁区分で足りるとして、財務課長において処理したことが窺われ(証人樽井清)、右処理をもって、本件決裁規程に違反するものということはできない。)本件決裁規程に関する控訴人らの主張は採用できない。」を加える。

五  同二三枚目表五行目の「本件工事区域」から同九行目末尾までを「本件において用途廃止対象物件は、区分・工作物、種目・門、名称・通用門、地目又は構造・鉄筋コンクリート造鉄製門扉とされているところ(乙一三、一四)、教育財産は、教育財産等取得、管理及び処分に関する規程三七条と、これに基づく別表1(教育財産の区分、種目及び数量の単位表)に厳格に定められており、これによれば、工作物の「門」は「木門、石門等の一箇所をもって一個とし、門扉を含む。」とされているから、右乙一三、一四の工作物の「通用門」は、門扉を含む「門」であり、周辺のスロープ(舗床)、階段、花壇(囲障、竹庭)等右別表1において独立の工作物に該当するとされるものが「門」に含まれることはないこと、したがって、本件において、「門」について用途廃止手続がなされたとしても、独立の工作物である本件工事のなされた門扉及び門塀部分を除く通用門模様替工事区域のスロープ(舗床)、花壇、階段、舗床、周辺整備工事区域のスロープ、花壇、花壇擁壁、雨水排水溝等の重要な教育財産である工作物の取り壊しの前提となる、用途廃止手続がなされていない旨主張する。しかしながら、県教育委員会が右規程に基づく教育財産として、本件門扉・門塀及びその周辺のスロープ・階段・花壇等を含む箇所(これらは、外観上も機能上も門扉・門塀と一体をなして一個の通用門を形成していることから、土地に含まれるものとしてではなく、一個の工作物(通用門)に含まれるものとして取り扱っている。)を一個の工作物(通用門)として台帳登録し、管理していること、したがって、平成二年九月二〇日の用途廃止決定は、右のとおり一個の工作物として台帳登録されている通用門についてなされたものであり、周辺整備工事区域のうち、スロープ・花壇等を構成しないもの(右の通用門に含まれないもの)に対応する改修前の当該部分は、土地の附属物にかかる部分であるため用途廃止の手続が不要であるので、用途廃止決定を行っていないにすぎないこと(証人樽井清)からして、本件において工事が行われた部分につき、用途廃止手続がなされていないとの控訴人らの主張は採用することができない。」と、同二四枚目裏六行目及び同二五枚目表八行目の「乙一」をそれぞれ「乙一の1」とそれぞれ改める。

六  同二五枚目表二行目の「あることから」の次に「(なお、控訴人らは、行政規則は、行政機関が定立する定めの内、国民の権利義務に直接関係しないものをいい、右定めの内、国民の権利義務に関する定めは法律上の根拠が必要とされるものであるから、法律の授権に基づいて鼎立された定めは、行政規則概念から除外されるものであること、公有財産規則は地方自治法施行令一三七条の二または法一五条一項に基づいて制定されたものであるから、公有財産規則はいわゆる行政規則ではない旨主張するが、一般的に地方自治法施行令一三七条の二に基づく財務規則は行政規則とされるものであること及び公有財産規則の右性質に照らして、右主張は採用することができない。)」を、同三行目の「なされていれば」の次に「(右事実は、乙一三(教育財産の用途廃止申出書)及び乙一の1ないし3(枝番を含む。以下同じ。)(工事請負契約書、通用門模様替工事設計書、図面)の内容等から明らかであるといえる。)、本件当初契約時に本件工作物について取り壊し、廃棄の決定が文書によっていない場合であっても、」を、同行目から同四行目にかけての「解される」の次に「(控訴人らは、文書によらなくとも決定してさえすればよいとすると、結局、各決定権限者の内心の問題となり、何か問題が起きたとしても、後日、決定権限者としては何らの責任が生じないように、何とでも言い逃れをすることが可能になってしまい、決定権限者の行政行為について第三者は全くチェックを施すことができないことになる旨主張するが、本件において、右取り壊し及び廃棄の決定がなされたことは、乙一三及び乙一の1ないし3の内容等から明らかであるといえるから、控訴人らの右主張は採用できない。さらに、控訴人らは、公有財産規則は適正な財産管理を確保するための行政機関の行為規範を定めているのであり、その定めに従わない右決定行為は違法である旨主張するが、右説示のとおり、本件において、かい長である被控訴人衣川によって実質的な取り壊し、廃棄の決定がなされており、決定の効力そのものに影響はないと解されるものであるから、右行為が財務会計上の行為である本件契約締結及び公金支出を違法ならしめる理由となるとは解することができないから、この点に関する控訴人らの右主張は採用することができない。)」を、同二六枚目表七行目の次に行を改め「さらに、控訴人らは、本件門扉及び門塀部分を除く通用門模様替工事区域及び周辺整備工事区域の工作物の取得につき、被控訴人衣川は取得手続をしていない旨主張するが、前記のとおり、門扉・門塀周辺のスロープ・階段・花壇等の物件は、外観上も機能上も門扉・門塀と一体をなして一個の通用門を形成していることから、一個の工作物(通用門)に含まれるとして取り扱っており、これについては右のとおりの決定及び手続がなされていること、これらに該当しないものについては土地の附属物にかかる部分であるとされていることによることが窺われるから、この点に関する控訴人らの右主張は採用できない。」をそれぞれ加える。

第四  結論

以上のとおり、控訴人らの、被控訴人下川及び同清水に対する訴えをいずれも不適法として却下し、被控訴人貝原及び同衣川に対する各請求をいずれも理由がないとして棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がない。

よって、本件控訴を棄却し、控訴費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条、九四条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田畑豊 裁判官熊谷絢子 裁判官神吉正則)

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